令和7–9年度 厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患政策研究事業
先天性骨系統疾患の医療水準と患者QOLの向上を目的とした研究
対象疾患:小児慢性特定疾病
当研究班の対象疾患のうち、指定難病ではないが小児慢性特定疾病制度の対象となっている疾患の基本情報をまとめました。
2型コラーゲン異常症関連疾患
カムラティ・エンゲルマン症候群
骨硬化性疾患
内軟骨腫症(多発性内軟骨腫症)
2型コラーゲン異常症関連疾患
概要
多くは2型コラーゲン遺伝子(COL2A1)の異常に起因し、X線所見が類似した一連の疾患群。胎児期・周産期に死亡する重症例から、小児期以降に診断される比較的軽症例まで、幅広い臨床像を呈し、以下の10疾患を含む。①軟骨無発生症2型 ②軟骨低発生症 ③扁平椎異形成症Torrance型 ④先天性脊椎骨端異形成症 ⑤脊椎骨端骨幹端異形成症 ⑥Kniest骨異形成症 ⑦脊椎末梢異形成症⑧中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(Czech異形成症)⑨Stickler症候群 ⑩大腿骨近位骨端異形成症。
原因
2型コラーゲン遺伝子(COL2A1)の病的バリアントによる軟骨内骨化の障害。常染色体顕性遺伝。9型コラーゲン遺伝子や11型コラーゲン遺伝子のバリアントが検出される場合もある。
症状
四肢および体幹の短縮による低身長、早発性の変形性関節症や関節拘縮、脊柱変形、小顎症、顔面中部低形成、U字型の口蓋裂、進行性近視または網膜硝子変性、難聴などを示す。内反足を示す場合もある。胎児期や周産期に死亡する重症例では、著明な四肢の短縮と変形、狭胸郭、腹部膨隆を呈する。
画像所見
椎体または恥骨の骨化遅延、脊椎・骨端・骨幹端の全てまたはいずれかの異形成。
治療
根本的な治療は確立していない。重症例では呼吸管理を要する。網膜剥離や難聴に対する対応も必要になる。小顎症に伴う歯列不正に対する矯正治療は保険適用。関節変形や変形性関節症、脊柱変形、環軸椎亜脱臼などに対して整形外科手術が施行される。
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カムラティ・エンゲルマン症候群
概要
頭蓋骨や長管骨の過剰な膜内骨化による骨皮質の肥厚、長管骨骨幹部の紡錘形肥大、近位筋の筋力低下、四肢痛を特徴とする骨系統疾患。
原因
Transforming growth factor β1遺伝子(TGFB1)の病的バリアントによるTGFB1の恒常的活性化。常染色体顕性遺伝。
症状
筋力低下、易疲労感、四肢の疼痛を呈する。筋力低下は多くの場合、下肢の近位筋にみられ、座位からの立位困難や歩容異常をきたす。後年、骨硬化の進行と神経孔狭窄により、顔面神経麻痺・頭痛・難聴・うっ血乳頭・めまいなどの合併症を伴う。
画像所見
頭蓋骨や四肢長管骨の骨皮質の肥厚、長管骨骨幹部の紡錘形肥大。
治療
根本的な治療法は確立していない。骨痛の抑制に対してはステロイドが有効である。 ステロイドの必要量を抑えるために、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるロサ ルタンが投与される場合があるが、保険適用ではない。神経麻痺に対して外科治療が行われる場合もあるが、骨病変は進行性であるため、管理は困難である。
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骨硬化性疾患
概要
主として破骨細胞の機能障害により、全身性にびまん性骨硬化をきたす疾患群。濃化異骨症、骨斑紋症、骨線状症、流蝋骨症、異骨性骨硬化症、頭蓋骨幹端異形成症、骨幹端異形成症(Pyle病)、頭蓋骨幹異形成症、硬化性骨症などを含む。
原因
破骨細胞の形成や機能、骨のリモデリングや石灰化の制御などに関連する複数の遺伝子(CTSK、LEMD3、ANKH、GJA1、SOST、WTX、SLC29A3)の異常が報告されている。
症状
視力障害、難聴、顔面神経麻痺、水頭症などの脳神経圧迫症状を呈しやすい。易骨折性を示し、骨折治癒は遷延してしばしば偽関節に至る。下顎に骨髄炎を生じやすく、難治性である。
画像所見
全身性、びまん性の骨硬化が共通するX線所見である。頭蓋冠、頭蓋底、顔面骨、下顎骨などの骨硬化像や骨肥厚像。四肢長管骨や肋骨、鎖骨などの骨肥厚像。脊柱側弯や末節骨融解像を示す症例もある。
治療
根本的な治療法は確立していない。脳神経障害に対し手術介入が行われるが、骨硬化のため治療に難渋する。骨硬化と骨癒合の遷延のため、骨折は難治性となる。骨髄炎も遷延化することが多い。難聴に対して補聴器が必要となる。
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内軟骨腫症(多発性内軟骨腫症)
概要
良性腫瘍である内軟骨腫が全身の骨に多発(3カ所以上)する疾患。成長期に腫瘍が増大し、罹患部位の骨の変形や短縮、骨折、関節可動域制限などをきたす。内軟骨腫は手足の短管骨に好発するが、長管骨、肋骨、脊椎、骨盤などにも発生する。片側性に腫瘍が多発するOllier病と、血管腫を伴うMaffucci 症候群を含む。
原因
非遺伝性。イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(isocitrate dehydrogenase)遺伝子IDH1およびIDH2のヘテロ接合性体細胞バリアントが報告されている。Ollier病ではPTH/PTHrP受容体1型(PTH1R)のバリアントが検出される症例もある。
症状
手足の短管骨、長管骨、肋骨、脊椎、骨盤などに腫瘍が発生する。腫瘍部分に疼痛のない骨性腫瘤を触知する。片側性を示すことが多いが両側性の場合もある。手指や足趾の膨隆、肢長差や四肢変形、関節可動域制限、病的骨折などを示す。Maffucci症候群では血管腫を伴う。
画像所見
石灰化像と骨透亮像が混在する膨隆性の病変を示す。Maffucci症候群では血管腫内に静脈石を認める場合がある。
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